Two weeks 2
だって、もの凄く腹が立ったのだ。
シンは、こんなに会いたくて仕方がないのに。
アスランは、なんでもないように呆れた顔して、素っ気ないのだから。
だから、無理を言って口頭で休暇承認させてコアスプレンダー飛ばして。
思ったよりもずっと早く着いて、なんでもっと早くこうしなかったんだろうと、とろい自分にも腹を立てながら、パイロットスーツも脱がずにアスランの部屋へ駆け込んだ。
そうしたらいなくて。でも、浴室から声が聞こえて。
自分の名を呼ぶ声に、何事かとドアを叩き開けて・・・シンは、凍りついた。
綺麗な肢体を奇妙に歪め、浴槽の縁にしがみ付くようにして。
濡れた瞳が呆然とシンを映し、色づいた唇が、大きく喘ぎ。
そうして、膝を立てて開かれた脚の間。
いやらしく広げられたそこから、ずるり、と指が抜け落ちて。
「アス・・・・」
「見るな馬鹿っ！」
慌てて体を返したアスランが、身を縮めてそこを隠してしまったけれど、そんな姿もまた、たまらなく色っぽい。
その上、シンの脳裏には、しっかりとあのいやらしい光景が焼き付いてしまっていた。
「な・・・んで、お前っ」
アスランは、完全にパニックを起こしていた。
自らの手に高められ、色づいていた体が、羞恥に更に赤く染まる。
あんな、恥ずかしいところをシンに見られて。
今すぐ、消えてなくなりたい。
「え、ええっ！？今、アスランさん、自分で・・・？」
「出て行けっ！」
「え、あ、はいっ」
がったん、と大きな音を立てて、扉を閉めて。
しかしシンは、またすぐにそれを開けた。
浴槽に縋りついていたアスランが、さっきと変わらぬ姿勢で竦み上がる。
「でもっ！」
濡れた体を小さくして、一生懸命に体を隠そうとしているアスラン。
脳裏に焼き付いた、どんな猥褻画像よりいやらしい光景。
その脚の間で、自らの体液に濡れて、震えていたもの。
「それ、また自分でするんですか？」
「お、まえっ・・・」
翠の瞳が、大きく大きく開かれる。
羞恥に身を震わせながら、混乱し切っているその人の艶やかさに、シンの心臓も跳ね上がった。
会えなかった２週間、ずっと思い描いていた体が、今、そんな想像よりもはるかに淫らな姿でそこにあるのだ。
「だったら、俺にやらせてくださいよ」
「な・・・にを」
どうやら立てないらしい、その人の側に膝を付くと、予想通りに拳が飛んできた。
しかし、受け止めたそれは全然力が入っていなくて、むしろその熱さ嬉しくなる。
「だってアスランさん、俺のこと考えてしてくれてたんでしょう？」
自分を呼ぶ声は、ドア越しにも聞こえた。
切羽詰った声は、している最中と同じで。
あんな素っ気ないことを言っていても、この人も自分が欲しかったのだと思うと、嬉しくてどうにかなりそうだ。
「だから、俺がしてあげます」
たまらない熱を孕んだ体を抱きしめると、嫌がっていたそれが、ひくんと震えた。
ちいさく喘いだ唇に、万感の思いを込めて、キス。
舌を差し込んだ口腔は熱く濡れていて、奥に逃げた舌を強引に味わえば、その旨さに喉が鳴った。
蕩けそうな口付けに、もともと快楽に緩んでいた体から、へちゃりと力が抜けるのがわかる。
唇から口腔から、恋人の体温が移って、アスランは泣きたくなった。
恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうなのに、それはどうしようもなく気持ちいい抱擁とキスだったのだ。
「ん、ふ・・・・ぅ」
思わず縋ったパイロットスーツの襟元から、少年の汗の匂いがして、それにさえひどく感じてしまう。
「いいでしょう？」
にっ、と笑った無邪気な笑顔。
それを瞳に映して。
アスランは、羞恥も何も忘れて、こくんと頷いた。
それから、慌てて我に返って。
「ベッド、連れて行け」
「立てないんですか？」
「誰のせいだ・・・」
言いながら、たまらなくなってその首に腕を絡める。
そうすれば、単純な少年はすぐに有頂天になって。
「俺のせいですよねっ！」
がばりとお姫様抱っこに抱き上げられ、アスランは恥ずかしさがぶり返して、ぎゅう、とシンの肩にしがみ付いた。
濡れたままの素肌に、乾いたシーツ。
そんな感触にさえ感じて、アスランは無理やり息を継いで、それを逃がした。
しかし、すぐにシンの指に触れられて、意味がなくなる。
「はっ・・・・」
硬いパイロットスーツに、しなやかな指が食い込む。
体温を通さない感触に焦れて、アスランはそれを掴んだまま、がしがしと揺すった。
「お、まえ、何着て・・・・」
「あ、すみませんっ！」
ばさばさとそれを脱ぎ捨てる少年を横目に、アスランは今更ながらに何故シンがここに・・・と、当然の疑問を浮かべたけれど。
「お待たせしましたっ」
すぐさま、恋人の愛撫にさらされて、そんなことは忘れてしまった。
「アスラン、さん・・・・」
力任せに抱きしめてくる、シンの腕。
それを感じるだけで、心臓が跳ね上がる。
どうしようもなく高まっていた体が、行き着く先を求めて走り出す。
「シ、ン・・・」
触れた少年の肌の熱に、アスランの理性は蕩けて落ちた。
腕の中で、素晴らしい色香を放つ恋人の体を、シンは力いっぱいに抱きしめた。
いつもいつも、シンばかりが欲しがっているのだと思っていた。
相手の存在も、体も心も。
シンには絶対に必要だけれど、アスランには、あんまり自分は必要ではないのかも知れないと。
でも、その人が。
シンを思って、自分で。こんなになるまで身を蕩けさせて。
それが、嬉しくて嬉しくて仕方がない。
「あなたも・・・してたんですね」
ちゅ、と、既に硬くなっている胸の頂にキスをする。
そうならそうと、言ってくれたらいいのに。
シンの恋人の最大の欠点は、どうしても言葉が足りないところだ。
そんなところも、大好きなのだけれど。
「んっ、ち、が・・・・・」
跳ねた体が愛しくて、言い訳をする人が可愛くて。
舌先でその硬さを楽しみながら、するりと指を下肢へと這わせた。
「違わないでしょう？ここ、もうこんな・・・って、うわ、すご・・・・・」
シンの指を迎えて、びくんと揺れた腰の奥。そこは、シンの想像を越えて、凄いことになっていた。
蕩けた肉襞がシンの指を食み、奥へ奥へと、必死の様子でいざなう。
入り口は、わずかな刺激も逃さないとばかりに、忙しなく収縮を繰り返している。
ぬるつく熱さは、シンの知る以上で。
なのに、アスランはまた、ばたばたと首を振った。
「違っ・・・さっき、初めて・・・・っあ」
「じゃ、俺ってすげえラッキー？」
絡みつく粘膜をかき分けて、ぐいぐいとと感じるところを強く抉ると、大きく体が跳ねて、高い声が上がった。
「あっ、う」
それから、しなやかな腕がシンの背を掻いて。
「シン、シンっ・・・・」
どうにかしてくれ、と、言葉ではなく、声音が、視線がそう訴える。
その壮絶な色っぽさに、シンだって我慢する気なんかない。
「アスランさん、可愛い。大好き」
抱え上げた脚は、しっとりとした熱を孕んでいて、こんなところまで、この人は気持ちいい。
でも。
もっと、気持ちいいこと。
繋がる、こと。
アスランが自分で蕩かせたそこは、赤く色づいてひくひくと震え、シンの熱を心待ちにしている。
誘われるように、ちょっと屈んで、その縁にちゅ、とキスして。
「あっ・・・・」
腰を跳ねさせてから、シン自身をぎゅっと押し当てて。
「っ、あ、ああっ・・・・・」
長い一人寝を強いられていた少年にとって、熟れきった恋人の中は格別だった。
絞り込むような内壁に、うっかり持っていかれそうになり、きゅっ、と歯を食いしばって、なんとか我慢する。
「アスランさん・・・・」
だって、ちゃんとこの人、満足させてあげなくちゃ。
「やっ、あ、あぁ、シンっ・・・・」
いつもは、なんとか声を殺そうと噛み締められる唇が、最初から、淫らに濡れた声をこぼす。
それに柔らかく口付け、洩れ出る声と、熱い舌を楽しみながら、シンはせっせと腰を使った。
「あっ、はっ、ああっ、あ・・・・」
アスランの腕が、シンの背中を滑って、いつも爪を立てる場所で落ち着いた。
この人の、一番好きなかたち。
イきたいんだろうなと思い、シンも、すごくそう思う。
だから、前を弄ってやろうと思って、深く突き上げながら、少し、体をずらした。
そのとき。
「ああっ、はっ、ぁん・・・・」
当たる場所が変わったせいだろう、びく、とアスランの腰が揺れて、触れる直前の指に、あたたかな飛沫が降りかかった。
シンを食んだ体内にも、きゅうっと力がこもって、やばいと思った時には、もうアスランの中に注ぎ込んでしまっていて。
「っ、は、ぁ・・・・・」
どうせなら、と、恋人の中への射精を思い切り愉しんだ後、シンは真っ赤になった耳元に唇を寄せて、囁いた。
「アスランさん、すごい。後ろだけでイっちゃった」
とたん、入ったままだったものをきゅうっと締められて、シンは心地良さに目を細める。
「っ、は・・・シン、こ、の・・・・」
「ばか、とか、言います？」
意地悪く笑うと、濡れた瞳がいっそう潤む。
ちょっとかわいそうになって、頬に優しくキスしてやって。
「すぐイっちゃって、ごめんなさい。今度はもっと愉しませてあげますね」
そんなシンの笑顔にアスランは見とれ、それさえも刺激になって甘い息を吐いた。
そう、２週間の時間のせいで、今、シンのすべてが、アスランを欲情させている。
「さっさと、しろ」
それなのに、そうと言えないのがアスランで。
偉そうな言葉に、きゅうきゅうとしがみ付く様子が加われば、いっそう可愛らしさが増すだけだ。
「はい」
だから、シンはちょっと笑って。
大好きな人を気持ちよくさせるために、震えっぱなしの腰を抱き寄せ、深く突いてはその奥を激しく揺さぶった。
「あ・・・んっ、は、ぁん、シン・・・・」
感じて身をよじり、切なく泣いて、シンの名を呼んで。
夢にまで見た恋人の姿に、シンも我慢が効かなくなってくる。
「アスランさん、アスランさんっ・・・・・」
「はっ・・あっ・・・・シン・・・っ」
体の奥深く、確かに感じるシンの熱に、アスランも声を惜しまず、啼いて啼いて、果てた。
ぐったりとベッドに突っ伏した恋人が、激しい自己嫌悪に襲われているのは明らかで、シンはなんだか可笑しくなりながら、汗の浮いたままの肩にキスをした。
する、とまだ赤い頬がシーツを滑って、泣きそうな瞳が、シンを見上げる。
「なんで、お前、ここに」
まず聞かれるだろうそれが、今まで持ち越しになったのは、つまりそれだけ余裕がなかったのだと思うと、嬉しい。
「無理やり休暇取って来ました。やっぱコアスプレンダーって早いですね」
すぐ着いちゃいました、と言うシンに、アスランはまたぐったりとシーツに頬を埋めた。
あ、呆れられてる。
でもそんなの慣れてるから、シンはかまわず濡れたままの髪を梳いて、頬ずりした。
あー、アスランさんの匂いー。
久々の逢瀬は、それだけでもう幸せになれてしまって。２週間我慢したご褒美を、シンはしみじみと噛み締める。
そんなシンを邪険に振り払い、アスランは地を這うような声で、唸った。
「お前・・・・誰にも、言うなよ」
「何を？」
とぼけてみせると、突っ伏したまま、片目だけがぎんぎんにシンを睨んでくる。
でもなんだか、そんなのも可愛くて。シンは調子に乗って、くすりと笑った。
「あれですか？アスランさんが、後ろに指突っ込んで、ひとりで・・・・」
「シンっ！」
なんでそんな体勢から、と、不思議に思うような見事な拳を喰らって、シンは、そこでやっと、言いすぎたと反省した。
「・・・ごめんなさい。言いません」
ぶん殴られた頬が痛い。でも、その頬がそのまま緩んでしまうのは、身を起こした恋人の、艶かしい姿のせいだ。
「とりあえず・・・お前、俺が呼び寄せたことにしておいてやるから」
思いがけない気づかいに、嬉しくなってぎゅうっと抱きしめる。
「ありがとうございますっ」
ああもうこの人大好きと、キスしようと顔を近づけたところで、それを力ずくで止めたアスランが、ぽんぽんとシンの頭を叩いた。
「その代わり、明日、俺が今見てる機体を見て行ってくれ。丁度、他のパイロットのデータも取りたかったんだ」
「えー！？俺、明日までしかいられないんですよ！！」
嫌だと騒ぐシンの髪を、ぐい、と掴んで。
「我慢しろ。明日で、いいから」
そう言って笑った、翠の瞳。
「今夜はいいってコト？」
聞きながら、シンの手はもう、アスランの下肢をさぐりはじめていて。
そうして、２週間ぶりの恋人との夜は、騒々しくも濃やかに、過ぎていったのだった。
終